食物アレルギー④

[2022年07月26日]

食物アレルギーの第4回目です。しばらくサボっていたので今回は早めのペースで

アップしています。

前回は、食物アレルギーの診断についてのお話でした。ちょっとだけ復習します。

診断のための検査は理論的には簡単だけど、実際検査を行うのはそう簡単ではない

というお話でした。

どの食物が原因かわからない状態で除去食試験を行わないといけないというところに

まず第1の関門があり、ここを突破しないことには検査自体が成立しません。

現時点で検査のための万能食は存在しないため、この検査のためのフードの選択に一番

気をつかう必要があります。第2の関門は、除去食試験をきちんとルール通り行える

かどうかです。除去食試験は、飼い主さんが自宅で行わなくてはなりません。

検査のご飯以外のものをちょっとでも食べてしまった場合、正しい診断は行えません。

1つ目の関門は獣医師が頑張らないといけないところで、2つ目の関門は飼い主さんが

頑張らなければいけないところです。つまり、獣医師と飼い主さんがお互い頑張らないと

検査はうまくいかないということです。

 

それでは本題に入ります。今回は、実際の症例のご紹介をしたいと思います。

①雑種   メス(避妊済み) 3歳半(来院時)

鹿屋からご来院くださいました。この子は、柴犬とフレンチブルのMixでした。両犬種とも

アレルギー性皮膚疾患の好発犬種です。

飼い主さんが思い出せる皮膚病の初発は、1歳過ぎ頃だったそうです。最初は、眼と口の

周りを痒がり出し、脱毛とカサブタがどんどん広がってきたとのことでした。

症状は年を追うごとにだんだんひどくなり、春から夏にかけて特にひどくなるが1年を

通してすっきりきれいになるということはないとのことでした。

初診時の写真です。6月でしたので症状がほぼピークに近いころだと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見た目もかなり痒そうですよね。ひっかき傷もあり、来院時も痒がっていました。

皮膚は肥厚して脂でべとべとしており、臭いもありました。

経験上、食物アレルギーはアトピー性皮膚炎よりも症状が強く、痒みがひどい印象が

あります。痒み止めのお薬も効きにくいこともあります。

除去食試験を飼い主さんにがんばっていただき、無事食物アレルギーと診断すること

ができました。この子は、運よく一発目のフードで当たりでした。

 

皮膚がきれいになった写真です。最初の写真から、約2か月後です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かなり良くなりましたね。皮膚の状態は完璧です。毛も生えてきて飼い主さんも

喜んでくださいました。検査前は薬が切れなかったのですが、撮影時はご飯の変更以外、

一切皮膚のお薬は使用していません。ちなみに、ご飯をもとのに戻すと皮膚症状が再発

しました。現在までの所、お薬は全く必要なく、ご飯だけで皮膚症状なく過ごせている

そうです。

ご飯さえ合ってしまえば、一切治療が必要なくなってしまう食物アレルギーの典型例です。

ご飯だけ気をつけていればよいラッキーパターンですね。食物アレルギーはご飯をピタッと

合わせられれば、症状が劇的に改善しますので、こういった症例を見ると頑張ってご飯の

検査をしてよかったなと思います。

今回は、ここまでです。別な症例はまた次回ご紹介します。

 

森の樹動物病院は、鹿児島で犬と猫の皮膚病、食物アレルギーの治療に力を入れています。

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