食物アレルギー⑤

[2022年08月13日]

夏休みも残りわずかとなってきましたね。早いものですね。

では、食物アレルギーの第5回目です。

今回も食物アレルギーの実際の症例のご紹介をしたいと思います。

食物アレルギーに関しては今回で最後となります。

 

②チワワ 去勢オス 3歳1カ月(来院時)

皮膚病の初発は、1歳くらい。皮膚は徐々に悪化してきて、今はほぼ1年中皮膚の症状がある。

冬はフケが多くなり痒がることが多い。シャンプーは2週間に1回しているが、洗っても次の日には

もう臭いがする。ご飯は加水分解アミノ酸食をあげているとのことでした。

アミノ酸食、でましたね。これに関しては、前々回のところでお話ししましたので、見て

ない方は一度見てみてください。

ただ、この子で考えられることは2つです。(感染症を除外してアレルギー性疾患と仮診断

した時点)つまり、①食物アレルギーだが今食べているご飯が合っていないか、②ご飯は全く

関係のない犬アトピー性皮膚炎であるかのいずれかです。

結果としては、この子は前者でした。ちなみに私が除去食試験のフードとして選んで、症状が

よくなったものは加水分解食ではありませんでした。アミノ酸食を食べているにも関わらず、

皮膚はよくならなかったということからもアミノ酸食は万能食ではないというよい証拠ですね。

何も考えずにアミノ酸食などの加水分解食で除去食試験をしたつもりでいると診断を誤って

しまう可能性があるので要注意です。

 

それでは、初診時の写真です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

顔と首、脇、肘などの皮膚が赤くなり、脱毛していました。また、皮膚はべたっと

しており、独特なにおいを放っていました。見るからに痒そうです。

 

初診から約1か月半の写真です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かなり発毛が見られ、皮膚も赤くありません。嫌な臭いもほとんどしません。

何より痒みの症状がほとんどなくなっています。

この時点で、お薬はまったく使用していません。ご飯の変更のみです。

現在までのところ、だいたい2か月に1回ご飯の購入をしていただいているだけで

お薬は何も使っていません。

 

最後の症例です。

この子は食物アレルギー単独の症例ではなく、犬アトピー性皮膚炎と食物アレルギーを併発

した症例でした。実際は、この子のように食物アレルギー単独より、両方のアレルギーを併発

している症例を見ることのほうが多いです。

併発症例ではご飯を反応しないものにしつつ、犬アトピー性皮膚炎の対応をしていくことと

なります。何度も言いますが、犬アトピー性皮膚炎は完治しない皮膚病ですので生涯に渡って

スキンケアや薬物療法などの手を加えていかなければなりません。

併発症例の場合、食物アレルギーの対応をしないまま、アトピー性皮膚炎の治療しかしていな

ければ、お薬を使っていてもなかなか良くならなかったり、必要以上にお薬を使用してし

わなければならなくなります。

 

それでは、症例の紹介をします。

③フレンチブルドック  避妊メス 2歳2カ月(初診時)

皮膚病の初発は1歳未満 梅雨時期から夏頃に悪化 冬には症状はある程度治まるが手足は

赤いまま というのが大まかな主訴です。

 

皮膚悪化時の写真です。体中ぶつぶつして、かなり痒がっていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

除去食試験後の写真です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ご飯の変更だけで、だいぶよくなっています。この時点で、ぶつぶつは消えて

痒みはほとんどなくなっています。

しかし、この子は食物アレルギーと犬アトピー性皮膚炎の併発症例なので、いずれ

皮膚症状と痒みが再発してきます。その時は、お薬が必要となってきますので

気を抜かずに、生涯に渡って皮膚病と付き合っていかなければなりません。

 

食物アレルギーは、今回で終了です。食物アレルギー単独の症例はそれほど多くはあり

ませんが、全くいないわけではありません。診断に制約があり、難しいところが多いの

ですが一度診断できると、劇的によくなり、その後投薬治療が全く必要なくなりますので

可能ならばチャレンジする価値はあると思います。

また、食物アレルギー単独ではなく、併発症例であった場合でもご飯が合うだけで、

食物アレルギー分の皮膚症状はよくなりますので、お薬が減らせる可能性もあります。

そもそもアトピー性皮膚炎と診断するためには、食物アレルギーの除外が必要となる

ので食物アレルギーがあるかわからない時点では、本当はアトピー性皮膚炎と

言い切ることはできないことになっています。わかってはいても、その除外診断が

なかなか難しいんですよね…。ちなみに、猫では犬以上に難しくなります。

猫の皮膚病も途中のままになっていますので、近いうちにまた続きをアップしたいと

思います。お楽しみに!

 

森の樹動物病院は、鹿児島で犬と猫の皮膚病、アレルギー性皮膚疾患、食物アレルギーの診断

治療に力を入れています。

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