診療案内

外科診療

去勢手術や避妊手術などの一般的な手術のほか、軟部外科、腫瘍外科、整形外科、眼科外科なども行なっています。当院では麻酔管理や疼痛管理に力を入れています。バランス麻酔、マルチモーダル鎮痛の考え方を基本に安定した麻酔管理を心がけています。また、術後回復の妨げとなる疼痛の管理にも積極的に取り組んでおり、動物に優しい手術を心がけています。

当院は手術に用いる縫合糸にもこだわっています。縫合糸の中でも最高品質の針および縫合糸であるETHICON社のPDS®Ⅱ、PDSPlus®を用いております。他のメーカーの縫合糸に比べ、非常に高価ですが組織反応性が少なく、操作性に優れております。また、感染を起こしにくく、特にPDSPlus®は抗菌剤が添加された抗菌縫合糸で6種類の細菌(黄色ブドウ球菌・表皮ブドウ球菌・メチシリン耐性黄色ブドウ球菌・メチシリン耐性表皮ブドウ球菌・大腸菌・肺炎桿菌)の縫合糸上でのコロニー形成を抑えます。手術には最高の道具を使いたいという信念のもと縫合糸にもこだわって手術を行なっております。

去勢手術・避妊手術について

昔と異なり、最近では手術の目的が妊娠させないためから病気を予防するために変わってきています。子供を生ませると病気になりにくいという迷信を信じていたり、病気でもないのに手術をすることに抵抗があり手術を躊躇する方もいらっしゃいますが、早期に不妊手術を行なうことにはメリットがあるということがわかっています。
メスでは、子宮蓄膿症、子宮内膜炎、卵巣腫瘍、乳腺腫瘍などの病気、オスでは、精巣腫瘍、前立腺肥大、肛門周囲腺腫、会陰ヘルニアなどの病気を予防できることが知られています。またオス、メスともに発情に伴うストレスから解放されるというメリットもあります。

ただ、わかってはいても家族の一員であるペットの手術であるということと、飼い主さんにとってペットを飼って最初の手術となることが多いということで悩まれるのは当然のことだと思います。また、ご家族の中で意見が分かれても不思議ではありません。しかし、手術にはご家族の総意が大切です。手術を悩んでいらっしゃる方、ご家族で意見が合わず悩んでいらっしゃる方、遠慮なくご相談ください。
犬と猫、去勢手術と避妊手術それぞれにメリット・デメリットが異なります。獣医学的知見を踏まえ、それぞれのメリット・デメリット、麻酔のことから手術のことまでご説明させていただきます。

当院の麻酔に対する考え方について

動物病院では、検査や治療に全身麻酔や鎮静処置を必要とすることがたくさんあります。しかし、現段階では獣医麻酔におけるゴールドスタンダードは存在しません。つまり100%安全な麻酔方法や鎮静方法は存在しないということです。それゆえ、われわれ獣医師は常に麻酔知識の向上に取り組み、各種モニタリング装置を駆使して可能な限り安全性に配慮し、麻酔リスクができる限り少なくなる努力をする必要があります。
現在の獣医療で行なえる周術期のモニタリングや麻酔管理は、人医療に比べると限界があることは否めません。しかし、可能な限り必要な機材を導入し、得られる情報を駆使して麻酔下にある動物の状態を把握し、様々な状況にも対処できるようになるために努力していきたいと考えています。そのための知識向上や技術習得のための努力を惜しまず常にアップデートしていきたいと考えています。

全身麻酔では、意識がないこと、痛みがないこと、 動かないことの3要素が適切に達成されることが望ましいとされています。単一の薬剤で、全身麻酔に必要なすべての条件をバランスよく満たす麻酔薬は存在しません。 現在ではこの3要素を、鎮静薬、麻酔薬、鎮痛薬、筋弛緩薬をそれぞれ用いてバランスよく調整する方法がとられています。これをバランス麻酔といいます。バランス麻酔では、単剤使用に比べて、それぞれの薬用量を抑えて使用できるため、呼吸・循環抑制などの副作用が軽減でき、より安全で安定した麻酔管理を行うことができます。

当院では、麻酔をかける前に身体検査や一般血液検査、血液凝固検査、レントゲン検査、心電図検査、血圧測定などの各種検査により動物の全身状態を可能な限り把握し、ASA分類で評価しています。人医療においてASA分類における評価と予後は相関すると言われています。このように術前評価をすることにより、動物の全身状態を客観的に把握し、麻酔により生じるリスクを予測し、事前に準備することができます。
ASA分類による評価をした後、手術内容を考慮して麻酔計画を立てます。術前検査は、去勢手術や避妊手術等の一般手術でも必ず行ないます。見た目上の健康は麻酔の安全性を担保しうるものではありません。弁膜症、心筋症などの心疾患や血液凝固異常、貧血、血小板減少症などの血液疾患、甲状腺機能低下症などの内分泌疾患、若齢症例では動脈管開存症や門脈体循環シャントなどの先天性疾患が隠れている場合もあります。
若ければ術前検査は必要ないというのには何の医学的根拠もなく、ただでさえ100%安全ではない麻酔において目に見えないリスクを見落とす可能性があります。

周術期モニタリングの中で一番重要なものが呼吸・循環動態の把握です。当院では、獣医麻酔外科学会・疼痛管理専門部会の出しているモニタリング指針を基に各種モニタリングを駆使して麻酔管理を行なっております。ハイリスク症例では、可能であれば動脈ラインの確保をし、動脈血圧のモニタリングを行なうこともあります。また、手術中にはモニタリング機器や五感を用いた動物の状態の看視だけでなく、麻酔カルテによる記録も行ないます。

当院での周術期における体温管理について

術中術後の体温管理にも十分気をつけております。全身麻酔をかけられた動物は手術後1時間で平常時の体温から1~2℃以上低体温になります。特に体の小さい犬や猫においては体温低下が顕著に起こりやすくなります。
手術中の低体温は、感染、血液凝固障害、筋弛緩遷延、麻酔覚醒遅延などのリスクとなり、術後の回復が悪くなる原因になることがわかっています。
動物病院で行う手術も去勢・避妊手術など短時間で終わるものだけでなく、長時間麻酔を維持しなくてはならないような手術も増えてきました。簡単に思われがちな歯科処置も麻酔下で1時間以上はかかる処置です。
体温管理を甘く見て怠ることは、麻酔リスクの上昇ひいては術後回復の悪化、死亡率の上昇につながります。一度低下した体温を再上昇させることは非常に困難なため、麻酔導入時から体温維持を図る積極的な工夫が必要となります。
当院では、人医療でも用いられている3M社のベアハガー PatientWarmingSystemと動物用輸液加温器F-CAREを用いて術中術後の動物の体温管理を行なっております。

麻酔時の輸液は体温低下の原因の1つになり得ます。動物の手術では患者までの輸液ラインが長くなり、また低流量が選択されることが多いため、輸液バッグ自体をを予め温めていても一度予熱した輸液剤が患者に到達するまでの間に外気によって冷却されてしまいます。F-CAREは、1mあるシリコン素材のヒーターを輸液ラインに装着することによって患者のより近いところまで輸液を加温し続けることができます。そのためヒートロスを最小限に抑えることが可能となります。また、自動運転により39℃をキープするようになっており、温めすぎや冷えすぎをアラームにより知らせる安全機構も備わっております。

人医療では体温管理に関するガイドラインが発表されていますが、このガイドラインでは体温維持の重要性を強調するだけでなく、温風式加温を推奨方法として認めています。ベアハガー(Bairhugger)はその名前の通り、くまさんにハグされているように暖かい空気に包まれるやさしい保温装置です。本体から発生した温風がホースを通ってマットに送り込まれます。マットには細かい吹き出し口が無数にあり、そこから温風が体に向かって放出されます。この温風が動物の体を包み込むことで、手術中の体温維持を行ってくれます。
また、体圧分散マットを用いることで、寝ている動物のマットにかかる体圧が分散され、負重部位の鬱血を少なくすることもできます。

当院での全身麻酔における気管内挿管について

全身麻酔では、麻酔下の動物の呼吸管理を行う上で気管内挿管が必須となります。気管チューブを動物の気管に挿入しますが、その時に気管と気管チューブの間をカフという風船様の構造で埋めるようになっています。
カフ圧が高圧過ぎると気管粘膜の血流障害を起こし術後の咳や痛みの原因となり、また低圧状態では酸素のリークや口腔内の分泌物や吐物などの誤嚥の危険性が高まります。
人医療においては、カフ圧が推奨圧の2~3倍の状態で使用されていることが全体の60%以上にも及ぶとの研究報告があります。動物の麻酔では、本来の適正なサイズより小さな気管内チューブが選択されることが多く、それに伴いカフ圧が過剰になる傾向にあります。カフ内圧測定器にはいくつかありますが、当院ではカフ圧を簡単かつ正確に調整できるTru-Cuffという道具を用いてカフ圧を調整することにより過圧を防ぎ、合併症を減らして安全な麻酔管理を心掛けています。

麻酔器から出るガスには水分がほとんど含まれていないため気道粘膜が乾燥して損傷したり、痰などの分泌物が固くなりチューブの閉塞を起こす可能性もあります。また、冷たいガスは体温低下の原因の1つにもなります。これらを補うため、Yピースと気管チューブの間に人工鼻を組み込みます。
人工鼻は、呼気中の水分を吸収して、吸気時にその水分を再び吸わせることにより、鼻と同様に上気道の加湿・加温効果を得ることができます。

当院での全身麻酔に用いる揮発性吸入麻酔薬について

麻酔に必要な機器の1つに気化器があります。気化器とは液体の揮発性吸入麻酔薬を気体に変えて吸入させるための装置です。揮発性麻酔薬は数種類存在しますが、現在獣医領域で用いられるものには、イソフルランとセボフルランの2種類があります。それぞれの揮発性麻酔薬に対してそれぞれ専用の気化器が必要となります。獣医麻酔では安価なイソフルランがよく用いられていますが、それぞれの麻酔薬にはメリット、デメリットが存在します。

イソフルランの特徴は、セボフルランに比べ血液/ガス分配係数が高いため、導入・覚醒に少し時間がかかる、また刺激臭を有し気道刺激性があるため単独導入には使いづらい、末梢血管拡張による低血圧や頻脈、悪性過高熱を起こすことがある、生体内代謝率が非常に低いため肝腎障害が少ない、脳圧、脳代謝抑制作用を持つため脳外科麻酔に適する、安価であるということがあげられます。
セボフルランの特徴は、血液/ガス分配係数が低いため、導入・覚醒が早く、調節性がよい、刺激臭がないためマスク導入での使用も可能、筋弛緩薬との共同作用を持つ、気管支拡張作用を持つため気管支喘息の患者にも使いやすい、気道刺激性が低く吸入時の咳誘発が少ない、心筋のカテコラミン感受性亢進による不整脈誘発作用が少ない、イソフルランに比べオゾン層破壊効果が少ない、徐脈がみられることがある、高価であることがあげられます。
ちなみに現在、人医療における全身麻酔では、セボフルランよりさらに導入・覚醒が早く、長時間麻酔でも覚醒遅延のないデスフルランが用いられていますが、かなり高価で特殊な気化器が必要なため、残念ながら獣医療ではまだ普及していません。

当院では、麻酔深度の調節性に優れるセボフルランをメインで用いています。セボフルランは麻酔深度をより早く変化できるため、麻酔による合併症の発症や急激な状態の変化、さらには心肺停止に陥った場合、より早く麻酔による影響を減少・除去できるということとオゾン層破壊がほぼなく環境にやさしいということもあり、個人的によく好んで用いています。

また、酸素配管とは別に麻酔器にエアボンベ(圧縮空気)も設置しております。人医療では、高濃度酸素吸入による吸収性無気肺、CO2ナルコーシス、活性酸素による肺障害(酸素中毒)などの弊害がわかっています。当院では、純酸素のみではなく両者を混合することにより酸素濃度を21%~100%の間で状況によって調整して使用しています。

当院での疼痛管理について

当院では、疼痛管理に最も力を入れています。
手術では必ず侵襲を伴います。侵襲により痛みが発生します。痛みを放置していると末梢感作や中枢感作により痛みがどんどん増強されていきます。また、痛みがあると交感神経が刺激されます。それにより血管収縮が起こり血流の低下や筋肉の緊張などにより、更に痛みが強くなるという悪循環が起こり、創傷治癒にも悪影響があることがわかっています。このような有害反応が起きないようにするために、術前からしっかりとした疼痛管理を計画する必要があります。

当院では、鎮痛効果に優れるフェンタニルやレミフェンタニル等の麻薬性オピオイドをメインに用い、さらに作用機序の異なるケタミンやリドカイン、メデトミジン、NSAIDsなどの薬やリドカインやブピバカイン、プロカインなどの局所麻酔薬をコンビネーションで用います。
作用機序の異なる複数の鎮痛薬を組み合わせることにより、それぞれの薬が少ない投与量で単独の鎮痛薬よりも強力な鎮痛作用を達成出来ます。つまり、相乗効果により強い鎮痛効果とそれぞれの薬の副作用を抑えた鎮痛が行なえます。この概念をマルチモーダル鎮痛と呼びます。

また、手術部位により硬膜外麻酔や末梢神経ブロックも実施しております。末梢神経ブロックとは伝達麻酔とも言われ、ブロックしたい神経を選んで局所麻酔薬を注入することにより、脊髄より抹消の神経支配領域の鎮痛を行なうことができます。処置には神経損傷等の危険性を防ぐため、超音波ガイド下もしくは電気刺激で標的神経を探して行なう電気刺激法により行ないます。一般診療でよく行なう局所麻酔の1つである浸潤麻酔とは異なり、抹消神経をターゲットに直接ブロックするので鎮痛効果はかなり高くなります。
末梢神経ブロックは、四肢の手術や抜歯などの歯科処置においてよく実施します。手術部位により、大腿神経ブロック、坐骨神経ブロック、腕神経叢ブロック、RUMMブロック、眼窩下神経ブロック、オトガイ神経ブロック、下顎神経ブロック、上顎神経ブロックを使い分けます。
硬膜外麻酔は、硬膜外腔に局所麻酔薬やオピオイド、α2受容体作動薬などの鎮痛薬を投与する鎮痛法で腹部手術や肛門周囲、尾部、会陰部、後肢などの手術において行ないます。

特に去勢手術、避妊手術は犬や猫にとって人生で最初の手術となることが多く、当院では犬や猫がなるべく痛い思いをしないように去勢手術、避妊手術における疼痛管理には特に気を使っています。
大きな問題がない限り、当院では去勢手術、避妊手術においても鎮痛作用の強い麻薬性オピオイドのフェンタニルをルーチンに用い、その他にもケタミンやNSAIDsなどの異なる数種類の鎮痛薬やリドカインやブピバカインによる局所麻酔を併用したマルチモーダル鎮痛を行なっております。

内科診療

呼吸器・循環器・消化器・泌尿器・内分泌などの内科疾患の診療を行います。動物病院で扱う病気で最も多いのが内科診療です。元気がない、食欲がないなどの諸症状に対して、その原因を追究し治療していきます。原因探索のため、様々な機器を用いた各種検査(血液検査・尿検査・便検査・レントゲン検査・超音波検査・内視鏡検査など)を行います。その他、各種予防に関するご相談もお受けします。

検査機器各種

歯科診療

犬猫において歯の病気は非常に多くみられます。3歳以上の犬猫の80%以上が歯周病にかかっていることがわかっています。歯周病は心臓病・腎臓病・糖尿病など全身疾患の悪化要因にもなり、口腔内を衛生的に保つことはペットが健康で長生きすることにつながります。麻酔下での歯石除去や抜歯、歯髄治療、フラップ術などの治療のほか、予防歯科にも力を入れています。日頃のホームデンタルケアのための歯みがき教室、歯科健診も定期開催しています。

治療例

腫瘍科診療

獣医療が進歩し予防獣医療が普及したことによりペットも昔より長生きできるようになりました。ペット保険会社の報告によると“がん”がペットの死因の1位となっています。がんの治療は、人と同じく早期発見・早期治療が基本です。外科治療・抗がん剤治療など、個々のケースごとに最良な治療方法を、十分なカウンセリングを交えながら提案します。

治療例

上腕部肥満細胞腫
乳腺腫瘍
尾根部腫瘍
腎臓腫瘍
脾臓腫瘍
肛門周囲腺腫

眼科診療

目が赤い、目が白い、物にぶつかるようになった、涙が多い、眼をしょぼしょぼする、目やにが出るなどの様々な眼の異常に対して各種検査や治療を行います。角膜染色検査、涙量検査、眼圧検査、眼底カメラを用いた眼底検査、スリットランプ検査、眼球内部構造を見るためのエコー検査など用いて診断し治療いたします。眼は物を見るという大事な器官であると共に非常にデリケートな器官でもあります。異常が見られたら早めにご来院ください。

眼科検査機器・眼科手術器具各種

眼科治療例