脱毛②

[2021年05月08日]

それでは、脱毛の第2回目です。

今回は、内分泌疾患による脱毛症の中の副腎皮質機能亢進症についてご紹介したい

と思います。副腎皮質機能亢進症は、他の2つにくらべて内容が多いのでちょっと長く

なると思います。。なので、何回かに分けてご紹介します。

 

副腎皮質機能亢進症はクッシング症候群ともいわれ、体内のグルココルチコイドが

過剰になることにより引き起こされる病気です。犬では、人や猫よりも発生率が高く

有病率は、犬全体の0.3%であると報告されています。

過剰になるグルココルチコイドは、その原因により外因性と内因性に分けられます。

外因性グルココルチコイドが関与した方は、医原性クッシング症候群と呼ばれます。

こちらは、グルココルチコイド製剤の長期投与によってクッシング症候群と同様の

症状になる病気で、われわれ獣医師の治療により引き起こされてしまう病気です。

内因性グルココルチコイドが関与した方は、自然発生クッシング症候群と呼ばれます。

こちらは、体内で分泌されるグルココルチコイドが過剰となる状態で、純粋に病気と

しての副腎皮質機能亢進症です。正確には、自然発生クッシング症候群のことを副腎

皮質機能亢進症といいます。

医原性のほうが多く、自然発生のほうは稀とされていますが、それほど少ないという

印象はなく、犬ではちょくちょく遭遇します。

 

自然発生クッシング症候群は、さらに下垂体依存性と副腎腫瘍性に分けられます。割合は

前者のほうが多いと言われており80~85%で、後者は10~15%と言われています。

下垂体とは、脳の組織の1つで膵臓と上皮小体を除くほとんどの内分泌臓器を制御する

ホルモンを分泌しています。そのため、下垂体はよくオーケストラの指揮者に例えられます。

その指揮される臓器の中の1つに副腎があり、下垂体からの刺激の過剰により副腎がグルコ

コルチコイドを過剰に分泌しているのが下垂体性クッシング症候群です。

下垂体依存性の多くは、下垂体の腺腫でその大きさが10mmを超えるか超えないかで

微小腺腫と巨大腺腫に分けられます。この2つでは、治療の第1選択が異なってきます。

前者は内服薬による内科治療が適応となりますが、後者では放射線療法が適応となります。

勤務医時代に下垂体巨大腺腫の症例を経験したことがあります。マルチーズのごんたくんと

いう子でしたが、お正月明けに発作で来院し、検査をして下垂体巨大腺腫と鼻腔内に悪性

腫瘍が見つかり、神奈川県の麻布大学で放射線治療を行いました。

放射線治療を下垂体と鼻腔内にしてもらいましたが、発作の症状は1回目の治療で良化しま

した。下垂体にはトータル3回、鼻腔内には4回ほど分割照射して治療終了となりました。

ごんたくんは、運よく放射線治療後にクッシング症候群の症状も改善され、内服治療がいら

なくなったのでその後の管理も楽になりました。

放射線療法は、治療できる施設が限られていることと、放射線を照射するのは1回だけでは

なく複数回行う必要があるので、飼い主さんの移動と費用の負担がかかってしまうのは

デメリットかもしれませんが、下垂体巨大腺腫を持つ犬の予後を延長させる可能性がある

ことと、治療における侵襲が低いということはメリットだと思います。

ただし、放射線療法は根治療法ではなく、下垂体サイズを縮小させ神経症状をなくすことと

下垂体から副腎への刺激を減らすことが目的となりますので、放射線治療のみでクッシング

症候群の症状の改善がなければ、内服治療を追加することによって症状を緩和させる必要も

あります。ちなみに、下垂体巨大腺腫に最初から内服治療のみを行うとさらに増大し悪化する

可能性があります。

 

副腎腫瘍性は、字のままですが副腎の腫瘍化のせいでグルココルチコイドが過剰分泌される

病気で、機能性副腎皮質腫瘍と言われます。

腺腫と癌腫に分けられますが、臨床的にも病理学的にも判別は困難なことが多いと言われて

います。治療の第一選択は腫瘍化している副腎の外科的摘出になります。

特に癌腫の場合、肝臓や肺、反対側の副腎やリンパ節に転移したり、特に右副腎では隣接

する後大静脈内に浸潤することがありますので注意が必要です。遠隔転移がある場合は、

手術不適応となります。その理由は、副腎癌の部分摘出、つまり取り残しがあるとクッシング

症候群の症状が改善されないからです。その場合は、内服薬による内科治療を選択することに

なります。

 

副腎皮質機能亢進症に用いられる治療薬には、昔からあるミトタンや動物薬もあり1番使用され

ているトリロスタン、下垂体からの刺激を抑制するカベルゴリン、近年人医療において日本でも

手術不適応あるいは効果のない下垂体性副腎皮質機能亢進症で適応となったパシレオチドという

お薬などがありますが、いずれも細かく治療効果をチェックしながら治療していく必要があります。

それぞれのお薬に適応する病態が異なりますので、検査した上でどのお薬を使っていくのかを十分

に検討する必要もあります。それぞれの細かい治療法は、長くなるので省略させていただきます。

 

今回はここまでです。やっぱり長くなりましたね。副腎皮質機能亢進症は犬の内分泌疾患の中でも

遭遇する機会の多い疾患です。皮膚症状以外の症状もたくさんあります。命に関わる症状もあります

ので知っておかなればならない重要な病気の1つでもあります。

検査や治療も病態によっていくつもありますので内容が多くなってしまうんですよね。

ということで、続きはまだた次回です。

 

森の樹動物病院は、鹿児島で犬と猫の皮膚病、内分泌疾患による脱毛症の治療に

力を入れています。

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