犬アトピー性皮膚炎の治療例②

[2020年09月21日]

だいぶ秋らしくなってきました。世間は4連休真っ只中ですね。

先週は大型の台風10号で大変でしたが、みなさん大丈夫でしたか?

 

今回も犬アトピー性皮膚炎の治療についてですが、今回は痒み止めを使った対症療法

ではなく、唯一の根治療法と言われるアレルゲン特異的免疫療法(減感作療法)に

ついてお話します。人のほうでも花粉症の治療などで行われていますので、ご存知の方

もいらっしゃるかと思います。

減感作療法は、欧米では昔から行われている治療法の1つで人では100年以上の歴史があり

ます。痒み止めの薬を使った対症療法とは異なり、体質改善を目的とし、アトピー性皮膚炎の

病態の本質に作用することを目的とした唯一の根治療法になります。

簡単に説明すると、原因になっているアレルゲンを少量から徐々に濃度を上げて投与していき

体に慣れさせていく治療法です。昔から行われている治療法にもかかわらず、明確な作用機序や

メカニズムはまだ完全にはわかっていません。しかし、近年多くの研究によってその機序が少しずつ

解明されてきています。

 

基本的には、皮下注射による接種を行いますが、舌下免疫療法と言ってアレルゲンを舌下の

粘膜より吸収させる方法も行われています。一般的には、皮下注射による減感作療法が行わ

れることが多いですが、抗原液の選択や濃度、接種回数など決まりはなく、それぞれの施設や先生

によりプロトコールが異なります。私も以前はアメリカから数種類の抗原液を個人輸入していま

したが、今は国内でもアレルミューンHDMというお薬が簡単に入手できるようになりました。

アレルミューンHDMというお薬は、コナヒョウヒダニの主要抗原Der f 2を用いています。

日本における血清中IgE抗体の調査でハウスダストマイト(コナヒョウヒダニ、ヤケヒョウヒダニ)

への感作が最も多いことから、抗原にDer f 2が選ばれたそうです。

このお薬の特徴は、特定の抗原蛋白Der f 2をカイコ-バキュロウイルスを使って大量に作らせて

高濃度、高純度にし、プルランという物質を結合させることによって反応性を高めて、さらに

副作用が出にくく工夫されているところです。組み換え蛋白を用いた減感作療法薬は世界初だ

そうです。粗抗原よりも不純物が少なく抗原蛋白を高濃度で投与できるため、従来の抗原液に

比べて効果の発現が早いことも特徴です。

 

これまでに報告されている皮下注射による減感作療法に対する有効率は、5~21.5%とされて

います。この有効率を上げるためには、基礎疾患に対する除外診断をどれだけ徹底できるかに

かかっています。特に食物アレルギーの除外はとても大事です。ここを見逃すと効くはずの減感作

療法も効かなくなってしまいます。

他院にて減感作療法を行ったのに効果のなかった症例がいましたが、当院で再度減感作療法を行ったら

維持できた症例もいます。私の経験上、65~70%くらいは効果がみられると感じています。

ただし、犬アトピー性皮膚炎以外の痒みの除外をきちんとし、治療開始時の年齢(慢性化の度合)、

犬種(効きにくい犬種がいる)をしっかりと吟味する必要があります。ここで手を抜くと成功率が

かなり下がってしまいます。

減感作療法はすべての犬アトピー性皮膚炎の症例で行える治療法ではなく、適応できる症例に

条件があり、まずはそこをクリアできるのかが第一の関門となります。

あともう1つ条件としては、最低でも1年間は治療を継続する必要があります。根治療法であると

言いますが生涯にわたって治療を継続(定期的に注射)していかなければならないこともあります。

ただし、副作用のあるステロイドなどの対症療法のお薬が減らせたり、休薬できることができれば

メリットは大きいと思います。

それでは、減感作療法による治療例をご紹介します。

 

【症例3】

雑種  推定8歳(保護犬) オス(去勢済) 体重;16kg

初発;推定6歳以前(飼い始めてしばらくして気付いたので不明) 初めは下腹部、大腿部を痒がる

去年より悪化して今年が一番ひどい 下腹部、左右耳、肘、脇、顔(眼周囲)足先を痒がる

とのことで、宮崎より来院されました。

アレルギー以外の皮膚病の除外、治療を行った後、アレルゲン特異的IgE検査、リンパ球検査を行い、

さらに除去食試験まで行った上で、犬アトピー性皮膚炎と診断しました。

Der f 2 特異的IgEが陽性だったため、アレルミューンHDMによる減感作療法を行うこととしました。

この子に関しては、減感作療法を選択したもう1つの理由は、費用面です。

アトピカやアポキルによる対症療法を選択した場合、体重が重ければ薬の量も多くなり、結果として

費用がかなりかかってしまいます。減感作療法だと体重が軽かろうが重かろうが使用する抗原液の

量は変わらないため、小型犬でも大型犬でも費用は変わりません。

治療前                   治療後(途中)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

森の樹動物病院は、鹿児島で犬猫のアレルギー性皮膚疾患、犬アトピー性皮膚炎などの痒みのある

皮膚病の治療、アレルゲン特異的免疫療法(減感作療法)に力を入れています。

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