皮膚組織生検①

[2021年01月30日]

組織生検という言葉をきいたことがありますか?

特に腫瘍の診断で行われることが多い検査です。体の組織を切り取ったり、針で

吸い取ったりして、それを病理診断医が顕微鏡で細胞を見て診断をする検査です。

病理診断医と言えば、以前テレビで人の病理診断医のドラマをやっていましたね。

そう言えば、芦田愛菜さんが、スッキリ!!で、将来病理診断医になりたいと言って

いました。

 

組織生検は、皮膚科の診療でも行います。すべての皮膚病で行う検査ではありません

が、非常に有用な検査の1つです。

基本的には、腫瘍性疾患や自己免疫性疾患などを疑う時に確定診断を得る目的で行います。

しかし、皮膚科の場合、確定診断を得る目的以外にも組織生検を行うことがあります。

その組織で今何が起きているのかをみることによって、病態の把握や除外診断を行ったり、

これまでの治療がうまくいっているのか、治療方針をかえたほうがいいのかなど、今後の

治療方針を考えるのに重要な情報を得ることもできます。

しかし、ただ組織を取って検査しただけでは有用な情報が得られない場合もあります。

特に皮膚科診療において組織生検を行う場合、いろいろと気を付けなければならないこと

があります。

1つ目は、いつ生検を行うかです。皮膚病の病態は時間経過によって変わっていきます。

それぞれの病気によって、診断できる病態のタイミングが異なります。組織を取るタイミングに

よっては診断をし損ねる可能性もあります。特に治療の前後では大きく変わってくることもあり、

検査と治療のタイミングも考える必要があります。

2つ目は、どこの部位を生検するかです。炎症が起きている場所からとるのか、カサブタの

ある所をとるのか、見た目がきれいなところからとるのか。皮膚病によって、その病気の

特徴的な病理所見が得られる場所が決まっています。なので、取るべき部位を間違えると

きちんとした診断ができない場合があります。

3つ目は、どのようにしてとるかです。外科的にすべてをとるのか、

丸い刃状をしたトレパンという器具(右の写真)でとるのか、さらに

小さい針でとるのかによって生検する組織の範囲や深さが変わっ

てきます。

深さはとても大事です。表皮で異常が起きているのか、その下の

真皮で起きているのか、脂肪組織で起きているのか、それぞれの

皮膚病でその病気の特徴的な異常が起こっている場所が異なりま

す。また、毛や毛穴で異常が起こる皮膚病を疑う場合は、毛穴が

きちんと見える方向を考えて組織を取らないといけません。

異常が起こっている場所が取れていなければ、病理診断医が

いくら優秀でも診断をし損ねてしまいます。

今回はここまでです。次回は、組織生検によって診断と治療方針を決定できた治療例を

ご報告させていただきますので、お楽しみに!

 

森の樹動物病院は、鹿児島で犬猫のアレルギー性皮膚疾患、自己免疫性皮膚疾患などの

皮膚病の治療に力を入れています。

霧島市以外の遠方でも診察ご希望の方は、一度お問い合わせください。

なお、皮膚科診療の初診は、時間がかかるため予約制とさせていただいております。

皮膚科診察(初診)ご希望の方は、お電話にてご予約をお願いいたします。

ご予約なしでご来院された場合、十分な時間がとれないため詳しい検査はできず、

お話とお薬の処方のみとなることもございますので予めご了承ください。