脱毛症⑥

[2025年08月06日]

前回からだいぶ空いてしまいましたが、脱毛の第6回目となります。

前回、CDAとBHFDの病気についてのご紹介をしましたが、今回は

実際の症例のご紹介をしたいと思います。

CDAもBHFDも特徴的なシグナルメントがあり、知っていれば即座に疑えますが

病気のことを知らないと何なのかよくわからない脱毛とされてしまうことも多々

あります。

それでは、早速ですが始めます!

症例の紹介です。

【症例】チワワ 避妊メス 来院時2歳半 毛色;イザベラ

【症状】半年前のちょうど2歳くらいから、脱毛が始まり徐々に進行してきた。

【主訴】脱毛が始まってから、かかりつけの病院ではサプリメントを処方され、

5カ月ほど飲んでいるが良くならない。原因を知りたい。

【現症】左右耳介尾側、頭頂部、頚部、四肢 左右側腹部・大腿部に非炎症性脱毛

以上が、来院時の情報です。

ちなみに、イザベラという色をご存知ですか?最近は少し見ることが増えてきましたが、

ちょっと珍しい色です。見た目は、チョコレートにミルクを入れた感じの色あいと言われる

ことがありますが、簡単に言うと薄茶色です。淡色系の被毛です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

脱毛している部位が、チョコレート色の毛だけなのが分かりますか?飾り毛など

肌色の毛はまったく抜けていないのが特徴的です。

 

 

 

 

被毛検査をすると上の写真のように、毛の中に巨大なメラニン顆粒の塊である

メラニンクランプが認められます。右の写真は、メラニンクランプの集まった場所で

毛が脆くなり、折れてしまっている所です。この毛折れのせいで、外見上脱毛をして

いるように見えます。他の詳しい検査は省略しますが、典型的なCDAの症例でした。

ちなみに、このイザベラはレアカラーでブリーディングで作出するのはものすごく大変

らしいです。また、ちょっと脱線しますが、毛色や柄は遺伝子によって決められています。

現在、犬の毛色を決定する遺伝子は15個わかっています。この中で体の基本色の決定に関係

する遺伝子は3つあります。これらの遺伝子の組み合わせで基本色が決まり、その他に色を

薄くする遺伝子や白斑や有色斑を作る遺伝子などが加わり、いろんな毛色や柄が決まります。

そのため、狙った毛色を効率的に作出するためには遺伝学の知識が必要となります。

ちなみに、珍しい毛色の作出に特化したプロのカラーブリーダーがいるそうです。

淡色系の毛色の1つであるイザベラの作出は、同じ淡色系のブルーを作出するよりもさらに

難しく、時間がかかります。黒色系の犬にブラウン遺伝子を持つ犬を交配させて、チョコレート

の毛色の子犬を生ませ、さらに毛色を薄くさせるD(Dilution)遺伝子を持つ犬を交配させて

やっとイザベラの子犬が産まれます。こういうと何となく簡単に思えますが、実際には3段階の

交配によって、毛色を決める3つの劣性遺伝子のホモ接合が必要になります。ちょっと遺伝学を

かじった人ならこれがどれだけ時間のかかる事が理解できると思います。

すいません!悪い癖で、脱線話が長くなりそうなのでここでいったん辞めます。毛色の遺伝

は、結構おもしろい話なので興味のある方は調べてみてください。

 

森の樹動物病院は、鹿児島で犬と猫の皮膚病、脱毛症の診断治療に力を入れています。

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