ミニチュアダックスの難治性・再発性膿皮症

[2019年03月03日]

今日は、鹿児島マラソンでしたね。天気予報では、雨とのことでしたが

今朝は雨も上がり、マラソンにはちょうどいい気候だったのではないでしょうか?

 

さて、今回は感染性皮膚疾患の症例をご紹介します。

膿皮症とは、細菌感染による皮膚炎のことを言います。この膿皮症は、犬ではよく見られる

皮膚疾患ですが、猫ではほとんど見られません。

犬の膿皮症における主な原因菌は、Staphylococcus pseudintermedius

いうコアグラーゼ陽性ブドウ球菌です。この菌は、犬の常在菌です

ので健康な犬の皮膚にも普通に存在しています。

何らかの原因によりこの常在菌が過剰増殖することによって、

膿皮症という皮膚病になりますがその正確な病態はいまだによく

わかっていません。

 

ブドウ球菌が過剰増殖してしまう主な理由として、皮膚のバリア機能の低下や免疫機能の低下など

が考えられます。犬アトピー性皮膚炎の犬は、生まれながらに皮膚バリア機能に異常があることが

わかっており膿皮症を起こしやすいことがわかっています。

また、高齢の犬では、内分泌疾患や悪性腫瘍など皮膚以外の問題によって皮膚バリア機能が低下する

ことがあり、その場合は膿皮症を起こしやすくなってしまい、治りにくくなってしまいます。

飼い主さんによく聞かれることがありますが、膿皮症の犬から、他の犬へ細菌が移ることはありま

せん。もちろん、人間に移ることもありません。

 

前置きが長くなってしまいましたが、今回の症例のご紹介をいたします。

<症例>

ミニチュア・ダックスフンド 未去勢オス 8歳1カ月(初診時)

初発;1歳未満に痒みの症状が始まる 通年性 今年が1番ひどい

初めのうちは治療したら落ち着いていた 今は治療してもよくならない

頚、脇、胸、腹部、背部に脱毛、カサブタ、湿疹が見られる

殺菌シャンプーを1か月に1回している

 

ということで、鹿児島市内から来られました。

皮膚スタンプ検査により、脱毛部位のすべてから球菌を多数認めました。

 

病歴から考えると基礎疾患としてアレルギー

性皮膚炎の存在がありそうです。

皮膚バリアが完全ではない若齢犬は別として

成犬でみられる膿皮症には、基礎疾患が

隠れていることがほとんどです。

難治性、再発性膿皮症では、その基礎疾患を見つけ出し、そちらの対処もしないとなかなか

コントロールできません。

今回は治療経過も長いため、使っていた抗生剤が効いていなかった可能性も考えられるため、

初診時に細菌培養検査・薬剤感受性試験を実施しました。

ステロイドとの併用が行なわれていたり、治療経過が長いほど、薬剤耐性菌になっている

可能性が高くなります。検査結果に基づいた適切な抗生剤を投与するため、治療経過の長い

転院症例ではこのような検査をすることがよくあります。

 

初診時の写真です。

ところどころ虫食い状の脱毛がみられます。

 

2週間後の写真です。

新たな皮疹はなく、だんだん毛も生えてきています。

 

1ヵ月後の写真です。

毛もほぼ生えそろいました。

 

はい、これで終了と言いたいところですが、これでやっとスタートラインに立った

ところです。

ここからは基礎疾患へのアプローチをしていかなければ、またすぐに膿皮症が再発

してしまいます。アレルギーなどの基礎疾患をもった症例では、再発させないように日頃

からケアをしていけるように飼い主さんへの理解を深めてもらうことが大切だと

考えています。

 

また、同時に私たち獣医師側もきちんとした知識を持って膿皮症の治療に当たらなければ

自分で自分の首を絞めているのと同じことになってしまいます。

近年、S.pseudintermediusをはじめとする犬の膿皮症から分離されたブドウ球菌の薬剤耐性

が問題となってます。私が新卒として働き始めた頃は、犬の膿皮症においてセファレキシン

がほぼ100%の抗菌効果を示していました。しかし、最近ではセファレキシンをはじめとする

βラクタム系抗菌薬に対し耐性を示すメチシリン耐性S.pseudintermedius(MRSP)が

増えてきているとの報告があります。実際、治療経過が長い症例ほど遭遇することが多々あります。

MRSPは、ペニシリン系、セフェム系、ペネム系、カルバペネム系、モノバクタム系のすべての

βラクタム系抗菌薬に対して耐性を示します。

つまり、MRSPに対しては、結構な数の武器が使えないということになります。

前回、外用ステロイドの内容のブログでも少しお話しましたが、ニューキノロン系抗菌薬は

私はここぞという時にとっておきたいので、はじめからあまり使用しません。

ブドウ球菌のニューキノロン系抗菌薬に対する耐性獲得も少し特殊です。ニューキノロン系抗菌薬と

マクロライド系抗菌薬は、同一クラスの抗菌薬に対して交差耐性を示すことが知られています。

交差耐性とは、1つの抗菌薬に対して耐性を獲得することによって2種類あるいはそれ以上の

抗菌薬に対して同時に耐性を示すことをいいます。すなわち、エンロフロキサシンに耐性を

示すブドウ球菌は、他のニューキノロン系抗菌薬のマルボフロキサシン、オフロキサシン、オルビ

フロキサシンなどに対しても同様に耐性を示します。

私が、最初からニューキノロン系抗菌薬を安易に使いたくない理由はここにもあります。

 

犬の膿皮症は、非常に一般的な皮膚病ではありますが、実はその病態は単純なものではありません。

背景として犬アトピー性皮膚炎や内分泌疾患、内臓疾患、腫瘍疾患などが潜んでいる場合、

その基礎疾患を見逃すと再発を繰り返したり、治療の反応が悪かったり治療に苦慮することも

多々あります。フレンチブルドックの膿皮症など、犬種によって治療アプローチを変えないといけ

ない場合もあります。

特に治療経過が長く治りにくい場合、発症に関連する複雑な要因を丁寧にひも解いていく必要が

あります。また、膿皮症が一時的に治っても再発を予防するためには、症例ごとにどのように管理して

いかなければいけないのかも把握しておかなければいけません。

 

森の樹動物病院は、鹿児島でなかなか治らない膿皮症や再発を繰り返す膿皮症などの皮膚病治療

に力を入れています。

鹿児島市内など霧島市以外の遠方でも診察ご希望の方は、一度お問い合わせください。