パピヨンのアトピー性皮膚炎

[2019年02月16日]

今回は、当院で治療をしている犬アトピー性皮膚炎のワンちゃんのご紹介をします。

症例は、パピヨン メス 9歳(来院時) 痒みは、1歳の頃から始まり、治療して

もあまりよくならないとのことで、鹿児島市内から当院に来られました。

特に目の周りを痒がっており、症状は通年性で1年中痒みがあるとのことでした。

 

犬アトピー性皮膚炎は、関与する抗原によって季節性か通年性の痒みを呈します。

一番多いパターンは、春から夏にかけて症状が悪化するタイプですが、この時期の

高温多湿の気候も悪化因子になっている可能性があります。

通年性の症状を示すタイプは、ハウスダストマイトなど一年中感作される抗原が

アレルギーの原因になっている場合になります。

 

この症例は、感染症の除外を行った上で、アレルゲン特異的IgE検査、除去食試験を

行い、最終的に犬アトピー性皮膚炎と診断しました。ちなみにIgE検査では、ハウスダスト

マイトが陽性でした。

 

最終的には、写真の右側のように毛がふさふさになり、痒みもほぼなくなりました。

8年間ほとんどよくならなかった皮膚がよくなり、毛も生えたということで大変

喜んでくださっています。

今のところ、鹿児島市内から1か月に1回くらい定期的に来院していただいております。

犬アトピー性皮膚炎は、完治はしません。しかも、単純に感作抗原のみが症状に影響する

のではなく、多因子疾患ですので、気候や生活環境、ストレスなどによっても悪化する

ことがあります。ですので、定期的にチェックすることにより、悪化しないように

メンテナンスしている状況です。今もいい状態を保てているのは、飼い主さんが、

遠方からにも関わらず頑張って治療を続けてくださっているからだと思います。

 

上でアレルゲン特異的IgE検査という言葉がでましたので、この検査について少しお話

したいと思います。

アレルゲン特異的IgE検査は、アレルギー検査と言われたりしますが、アレルギーを診断する

ための検査ではありません。なぜかというと、健康な犬でも環境抗原に暴露されていると症状は

ないのに陽性反応が出てしまうことがあるからです。逆に、検査結果がすべて陰性であっても

アトピー性皮膚炎でないとは言えません。

よく飼い主さんにうちの子がアレルギーかどうかアレルギー検査をしてくださいと言われることが

ありますが、上のような理由でIgE検査はアレルギーかどうか調べる検査ではありませんよと毎回

説明しています。

あくまでも補助診断として、犬アトピー性皮膚炎と診断した上で、暴露抗原を特定する目的で行う

ことがこの検査の目的となります。IgE検査のみを見てアトピーかどうかの判断をするのは間違いです。

目的もなくIgE検査を行ってもただお金だけかかるだけで、まったく意味がありません。検査結果を

どう治療につなげるかが大事になります。

 

IgE検査の項目には環境抗原のほかに食物抗原の項目もありますが、これに関してもIgE検査の結果

だけで食物アレルギーの有無を判断するのはナンセンスです。

IgEが関与するアレルギーはI型アレルギーと言われますが、食物アレルギーにはこのI型アレルギー

と別にⅣ型アレルギーも存在しており、Ⅳ型アレルギーのほうが多いと言われております。

さらに食物不耐性というちょっと厄介な病態も存在しますので、この俗にいうアレルギー検査だけで

食物アレルギーを診断することはできません。アトピー性皮膚炎と同じですね。

食物アレルギーの診断のゴールドスタンダードは、除去食試験と食物負荷試験と言われています。

つまり、実際食べた反応をみて判断するしかないということです。

ちなみに、私の経験上、純粋な食物アレルギーはそれほどたくさんはいないという印象です。

 

森の樹動物病院は、鹿児島で犬の脱毛と痒みを主訴とするアレルギー・アトピー性皮膚炎の治療に

力を入れています。

遠方でも診察ご希望の方は、一度お問い合わせください。