AI

[2017年07月18日]

”AI”と聞くとみなさん何を思い出しますか?

医療分野で聞かれるものだと2つあります。

1つは、Autopsy Imaging(死亡時画像病理診断)。

もう1つは、Artificial Intelligence(人工知能)です。

前者はちょっとマニアックかもしれませんが死後、CTやMRIなどの画像診断によって

死因を検証するもので死体の器質的病変を探って死亡時の病態把握、死因の究明を行う

ことを言います。確かチームバチスタの映画でもやっていましたよね。

 

今回の私の話題は、後者のAI、つまり”人工知能”の方です。

最近では囲碁や将棋などでプロ棋士を打ち負かしたり、ロボットや自動車などの自動運転、

Googleなどの検索エンジンなどいろんな分野で活用されてきています。医療の分野も例外

ではなく、医師の診断の補助とするための研究が行われています。

 

今月10日に国立がん研究センターとNECが人工知能を用いて大腸内視鏡の検査中に、

がんやがんの前段階のポリープを自動的に検知して医師の診断を補助するシステムを開発

したとの発表がありました。今回この発表を聞いて手前味噌ながら、工学と(獣)医学を

それぞれちょこっとかじったということでちょっと興味がわいたのでいろいろ調べてみました。

ちなみに、大腸がんは日本人の男女共に2番目に多いがんだそうです。実は私の祖母も

2年前に大腸がんで亡くなっています。

アメリカの研究によるとポリープが見つかった場合、積極的に取り除くと死亡率を下げられる

ことがわかっているそうですが、医師の目だけに頼った検査では24%が見逃されていると

いう報告もあります。おそらく術者の経験値や技量によって差がでるとは思いますが。

このシステムはまだ実用化されていませんが、実用化を目指した臨床試験を2年後には始め

たいとのことでした。実用化されれば、大腸内視鏡検査での見逃しを防ぎ、大腸がんによる

死亡率を減らすことにつながると期待されているそうです。

実用化はまだもう少し先になりそうですが、工学分野とのコラボレーションにより

また医療分野が1つ進歩する可能性を秘めています。

 

医療のIT化、AIの応用によって医師の人的ミスを防ぎ、個人では把握しきれない膨大な

情報から意思決定をアシストする、さらにはゲノムデータを活用して個々に対する

オーダーメードの診断や治療薬の選択を行なえる時代がやってくる可能性があります。

ちなみに現在、東大の医科学研究所では、がん患者の遺伝子データを入力するとがんの

発症に関連する遺伝子変異を速やかに選び出し、その変異を標的とする治療薬があれば

提示されるという研究がおこなわれているそうです。

自治医大では”ホワイト・ジャック”という診療補助システムの研究が行われています。

洒落っ気のあるネーミングですよね。

 

医師側だけのメリットばかりではなく、自宅に病院相当の監視、管理設備があれば患者が

自宅にいながら医師の助言を受けて、安心して在宅療養を続けることができるようになり

患者側もその恩恵を受けることができるかもしれないそうです。

また、単に診断、治療という面だけでなく、いろいろなデータの集積も可能となって、

創薬や医学研究、医学教育にも応用できると期待されているそうです。

アメリカでは、すでに2013年から”医療情報学”という専門医制度が始まっているそうです。

さすがですね。日本はこの分野では残念ながらまだまだ遅れをとっているみたいです。

この分野の発展は期待も大きいと思います。まだいくつかのブレイクスルーを経る必要があり

そうですが、近い将来まさに医療のパラダイムシフトを起こし得るのは確実だと思います。

 

すいません。長くなってきちゃいましたね。。。そろそろまとめに入ります。

いい面ばかりをあげてきましたが、AI医療が発展していけば将来の医師の存在価値はどう

なっていくのでしょうか?AIに取って代わられるのでしょうか?みなさんはどう思いますか?

私はそうは思いません。人間にしかできない部分が医療には存在すると思います。

患者が病気と向き合うために手助けをすることや話をきいてあげて不安を取り除くこと、

病気や治療の内容をわかりやすく説明して納得してもらうこと、これらは残念ながらAIには

ちょっとできないですよね。

ただ、AI医療が発展して、診療補助が可能となれば医師が診断、治療に対して使っていた

時間が節約できます。そして節約された分患者に向き合える時間が作れるのではないかと

思います。

 

医学の進歩はすごいですし、夢がありますよね。獣医療に身をおく立場として羨ましい

限りです。医学研究にかける費用や携わる人数など莫大なものなのでしょうがないとは

思いますが、正直獣医学は足元にも及ばず、蚊帳の外感は否めないですね。

先週参加したセミナーの講師の先生も言っていましたが、医療と比較すると獣医療は今だ

ブラックボックスだらけです。

長く同じ環境に浸っていると自分の見てきたものだけがすべてであるかのように思えて

きてしまいますが、時には外を見回して自分のしていることが本当に正しいことなのかを

考えることは大事なのだと思います。ちなみにこの講師の先生は私の大学時代の後輩ですが、

獣医師でありながら医学部に籍を置き獣医療に対して様々な問いかけをしてくれています。

私は彼の足元にも及びませんが一緒に話をすると未知の世界を知ることができ、とてもよい

刺激をもらえます。

最後ちょっと脱線してしまいましたが、私も獣医臨床に携わるものとしてちょっとずつでも

日々進化していけるよう微力ながら努力していきたいと思います。

ある先生が言っていましたが、なんのアップデートもせず病院だけに引きこもっていると

ガラパゴス獣医、略してガラ獣になってしまうらしいです。気を付けなきゃいけませんね。